2005年11月25日

息子のまなざし(2002/ベルギー=仏/監督:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ)


2005年度カンヌ映画祭パルムドール受賞「ある子供」公開記念・ダルデンヌ兄弟特集上映にて鑑賞。

同じ特集上映で、「イゴールの約束」「ロゼッタ」を観て、非常に好みの作風であったため、すぐにこれも観る。
奇しくも製作年順の鑑賞となったが、この兄弟監督の作品はどんどんシンプルに、そして研ぎ澄まされていくようである。

lefils.JPG職業訓練所の木工クラスを受け持ち、少年たちに技術を教えているオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)。新たに入所したフランシス(モルガン・マリンヌ)という少年が木工クラスを希望したが、オリヴィエは手一杯だという理由で断ってしまう。ところが、オリヴィエはなぜかフランシスが気になる様子。結局オリヴィエは後日フランシスを自分のクラスに受け入れるのだったが…。

典型的な職人肌のオリヴィエは、寡黙で無愛想。元妻の「なぜ訓練所を辞めないの」という問いに「教えることが好きなんだ」というセリフがあり、少年たちを育てることに情熱を注いでいるのがわかるのだが、ふだんの指導ぶりを見ても、ぶっきらぼうな口調で必要最低限のことしか言わない。
おそらくは生来の資質でもあるのだろうが、過去の不幸なできごとが彼の人生に暗い影を落としているのは明らかだ。元妻と別れたのも、その事件が原因の一端であったことも想像に難くない。
突然、その事件の元凶である少年フランシスが眼の前に現われ、動揺するオリヴィエ。
しかし前半ではふたりの関連性は明らかにされないので、オリヴィエのフランシスへの関心が何に起因するものなのか、まったく予測がつかないのだ。

同じ立場であったならば、多くの人はオリヴィエの元妻のようにパニックに陥るだろう。
もちろんオリヴィエも、とことんまで糾弾し懺悔させたい気持ちもあるはずだ。人間だから当然のことである。
本作もまた、極力センチメンタリズムを廃し、主人公の心情に踏み込まないつくりになっているので、オリヴィエがいったい何を考えているのかわからない。フランシスへの指導や少ない会話を通して、少年の本質を見極めようとしているのか、あるいは何かとてつもないことをたくらんでいるのか、作業場や車中での微妙な距離感が薄氷を踏むような緊張感を伴い、痛いほどである。

オリヴィエは最後まで少年の名前を呼ばなかったし、少年は睡眠薬を常用するほど情緒不安定で、彼なりに苦しんでいるのもわかる。
そんなふたりが今後どのような関係を築いていくのか、ほとんど予測できない終わり方が深い余韻をもたらす。逆に、いかようにも考えられる余地があるということ。
フランシスを受け入れたように見えるオリヴィエだが、この先もきれいごとでは済まされない葛藤があるだろう。
深い絶望や大きな罪を抱え、果たしてどのように生きるのが人間らしいのか、そんなことを考えながら帰途についた。

評価:★★★★☆

息子のまなざし
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posted by bambi at 23:59 | Comment(4) | TrackBack(10) | LOG #ま-も
この記事へのコメント
こんばんは。
監督は復讐ができる状況であるのに復讐をしないという男を描きたかったらしいですね。復讐に安易に走る映画が多い中で、この作品の持つ深い自制と赦しというテーマは尚更心に響くものであるように思いました。TBさせて頂きます。
Posted by lin at 2005年11月27日 20:38
>linさま
復讐ドラマである「親切なクムジャさん」を観たばかりなので、その違いには非常に興味をもちました。
復讐もしない、むしろ少年を育てようとする姿勢は、生半可な胆力・精神力ではありませんね。

どちらがより苦難の生き方であるかは明白です。
不器用だけど自らを律して生きようとするオリヴィエに深い感銘を受けました。
Posted by bambi@管理人 at 2005年11月27日 21:40
こんにちは

安直な結論を出して終わらないところが、ダルデンヌ兄弟作品の特徴ですね。

オリヴィエは、フランシスに対してと同じように自分にも試練を課しているように思えました。

監督は、オリヴィエに対してと同じように観客にも試練を課しているように思えました。

見ていて疲れる作品だったので・・・
Posted by 朱雀門 at 2006年02月26日 10:34
■朱雀門さま
独特のカメラワーク、観ていてすごい疲れますよねぇ。
被写体を舐めるように追うのが生々しくて、静かな迫力に圧倒されてしまいます。

三半規管の弱い人にはかなりの試練かと…
Posted by bambi@管理人 at 2006年02月26日 18:22
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