2005年11月24日

ロゼッタ(1999/ベルギー=仏/監督:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ)


2005年度カンヌ映画祭パルムドール受賞「ある子供」公開記念・ダルデンヌ兄弟特集上映にて鑑賞。

オートキャンプ場のトレーラーハウスで、アル中の母親と暮らすロゼッタ(エミリー・デュケンヌ)。きちんとした職に就いてまともな暮らしがしたいと切望しているが、せっかく手に入れた工場の仕事も解雇されてしまう。だが涙を見せることもなく、仕事探しに奔走するうち、ワッフル売りのワゴンで働く青年リュケと親しくなる。

欧米ではトレーラーハウスで生活している最下層の白人種は“ホワイトトラッシュ”と呼ばれるが、この親子は自前のトレーラーハウスすら持たず、家賃を払ってオートキャンプ場で暮らしている。母親は酒浸りでしょっちゅう男を引っ張り込むし、住所不定だからまともな仕事にはなかなかありつけない。
こんな貧乏スパイラルから抜け出すのは生半可なことではなく、ロゼッタの前途は暗澹たるものだろう。だがロゼッタは痛々しいほどバイタリティにあふれ、定められた運命を変えようとあがく。少女らしい潔癖さで母親をなじり、庇護し、他者の施しはきっぱりとはねつける。
本来なら庇護されるべき年頃の彼女が抱えるストレスは相当なもので、ときおり原因不明の腹痛に襲われている。

まともな暮らしを渇望するあまり、せっかくできた友人すら裏切るくだりは、ほのかに見えた希望の光すら潰してしまうようで胸が痛かった。同時にその生きることに貪欲な姿に圧倒され、責める言葉は見つからなかった。

これほどロゼッタに感情移入してしまうのは、やはり独特のカメラワークとドキュメンタリー風の演出によるものだろう。
オートキャンプ場に戻る前に林の中で長靴に履き替えるシーン、車通りの多い道路を間合いを見計らって横切るシーン、街でワッフルを食べながら水を飲むシーンなど、とくに意味をもたない日常的なシーンが数え切れないほど反復される。ロゼッタの行動や習慣が、取捨されずに映し出されることによって、彼女に最も近い観察者となるのだ。

常に前屈みで、何かに急きたてられているように早足で歩き、ほとんど無表情で可愛らしいとは言えないロゼッタ。
ラストシーンで彼女が初めて見せる、搾り出すように感情をむき出しにする姿はとてもいとおしい。

評価:★★★★★

ロゼッタ
B00005HNUDエミリー・ドゥケンヌ ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック=ピエール・ダルデンヌ

ジェネオン エンタテインメント 2000-10-27
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posted by bambi at 20:46 | Comment(6) | TrackBack(5) | LOG #ら-ろ
この記事へのコメント
はじめまして。
「ロゼッタ(1999/ベルギー=仏/監督:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ)」を拝見し、ダルデンヌ兄弟を詠った拙い短歌にTBさせていただきました。
よろしければお立ち寄りください。
Posted by 謎野 at 2005年11月25日 00:19
>謎野さま
短歌をされている方からTBいただくとは驚くやら嬉しいやら、ありがとうございます。

しかし、ここ最近seesaaの不調なのか何なのか、gooブログにTB打てないんですよねぇ。
何度トライしてもだめなんです…。
seesaaとgooブログの相性悪いのかなぁ。

TB打てなくてごめんなさいです…
Posted by bambi@管理人 at 2005年11月25日 22:49
こんばんは。
突然すみません。ジャン=ピエール氏とリュック氏のダルデンヌ兄弟の映画 『ロゼッタ』を検索して訪問させて頂きました。
コメントとトラックバック、失礼いたします。

この作品を僕は最近ビデオで観て深い感銘を受け、bambi様と同様に恵比寿の映画館で観させて頂きました。
この映画は、ジャン=ピエール氏とリュック氏のダルデンヌ兄弟の鋭く乾いたタッチながらも暖かい視点を感じる独特の映画作りの技とロゼッタ役を演じたエミリー・デュケンヌさんをはじめとした出演者の方達の演技が素晴らしい作品でした。

また遊びに来させて頂きます。
今後共、よろしくお願い致します。
ではまた。
Posted by たろ at 2005年11月27日 01:02
>たろさま
すみません、貴ブログもgooですね…TB返しできなくて(´・ω・`)

近日公開の「ある子供」が気になり、恵比寿ガーデンシネマの特集で旧作3本観ることができましたが、どれも心に残る作品でした。
個人的には、3本のうちでは「ロゼッタ」が最も良かったなぁと思いますが。
ダルデンヌ兄弟監督の作品は俳優陣もすばらしいですね。エミリー・デュケンヌも難しい役をとても自然に演じており、引き込まれてしまいました。

「ある子供」の公開が楽しみです。
Posted by bambi@管理人 at 2005年11月27日 01:18
やっと4作品見ることができました。
彼ら兄弟の作品は一貫してますね。
「ロゼッタ」がベストかなぁ個人的に…
いややはり甲乙つけがたいですw
派手な演出や説明的描写をそぎ落として、
日常の習慣を取捨しないというのは素晴らしい選択だと感じました。
Posted by 現象 at 2005年12月17日 18:57
>現象さま
日常って、どうでも良いこと、意味のないことの繰り返しなんですよね。
それをわざわざ映画で見せても面白いものにはならないだろうと思ってしまいますが、演出によってこれほど生々しいリアリティを持たせることができるとは驚きです。
尋常の感性ではないですね。
Posted by bambi@管理人 at 2005年12月17日 22:47
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『ロゼッタ』 ★★
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Weblog: 時流を聴く
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051123 日々歌う
Excerpt: ―NHK「クローズアップ現代」(051121)にダルデンヌ兄弟の出演するを観て詠める  まなざしのやさしく深き映画撮るベルギー人の兄弟のゐて  ダルデンヌ兄弟撮りてわが魂に深く刻まる
Weblog: 雪の朝ぼくは突然歌いたくなった
Tracked: 2005-11-25 00:17

失敗しないわ・・・私も失敗しない、おやすみ・・・おやすみ〜J−P & L.ダルデンヌ「ロゼッタ」
Excerpt: こんばんは。 晴れの火曜日です。 今日はビデオで観て、深く感銘を受け直ぐに恵比寿の映画館で観直した映画について。 『ロゼッタ (ROSETTA)』 (‘99年 ベルギー/フランス) キャンプ場のトレ..
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ロゼッタ [CATV]
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