2005年11月23日

イゴールの約束(1996/ベルギー=仏=ルクセンブルグ=チュニジア/監督:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ)


2005年度カンヌ映画祭パルムドール受賞「ある子供」公開記念・ダルデンヌ兄弟特集上映にて鑑賞。

ベルギーで修理工見習いをしているイゴール(ジェレミー・レニエ)は、不法移民の斡旋をして稼いでいる父・ロジェ(オリヴィエ・グルメ)と二人暮らし。仕事中にも父の手伝いに呼び出され、しょっちゅう早退しているイゴールは、ほどなく仕事をクビになる。
ロジェが移民を住まわせているボロアパートでは、アフリカ移民のアミドゥが妻のアシタと赤ん坊を国から呼び寄せていた。ある日、アミドゥが事故で大怪我を負い、イゴールは病院へ連れていこうとするが、面倒を恐れたロジェに止められる。アミドゥはイゴールに妻子のことを頼むと言い残して死んでしまう。妻のアシタには夫の死を隠し、なんとか帰国させようとするが、夫を信じているアシタはアパートを出ていこうとせず…。

センチメンタリズムを廃した独特のカメラワークが、生々しいほどのリアルさを持つ。ストーリーに派手なところはないのに、一瞬たりともスクリーンから眼が離せなかった。

ベルギーの最下層で暮らす親子が、さらに弱い者(不法移民)から搾取して生計を立てている。父親のほうは、罪悪感など持たず、都合の悪いことは忘れて生きているように見えるが、そうしなければ愛する息子を幸せにすることはできないと信じてふるまううちに、いつしか本当にそういう人間になってしまったのだろう。
イゴールもそんな父親に精神的に支配されており、父親そっくりな言動が目立つ。父親の命令に盲従し、やりたい仕事もあきらめてしまう。すっかり人間的な感情が麻痺しているように思えるイゴールだが、アミドゥの事件がきっかけとなり、約束を果たす誠実さと、真実から逃げないで生きることを選択する。
イゴールが選んだ道は、同時に愛する父親を否定しなければならないということ。これは子どもにとって何よりも苦しく、つらいことである。親を捨てるということは、大人になってもなかなか思い切れないものなのだ。15歳のイゴールにとっては世界が一変するほどの決断であったろう。
イゴールはどのように生きていくのか。
観る者にすべてを委ねたラストが美しく、余韻が残る。

評価:★★★★☆

イゴールの約束
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posted by bambi at 22:59 | Comment(4) | TrackBack(3) | LOG #あ-お
この記事へのコメント
おお、3作品全て見たんですね。
個人的今年度洋画ベスト3に食い込むかどうか、
「ある子供」はそれくらい楽しみにしています。

>観る者にすべてを委ねたラストが美しく、余韻が残る。

まさにそんな感じですね。
一貫した武骨なスタイルが好きです。
僕は「ロゼッタ」が未見なんで早く見なければ。
Posted by 現象 at 2005年11月29日 01:44
>現象さま
「ある子供」期待しまくりです。
おそらく私も今年のベストに入るんじゃないかと思ってます。

3本のうち、個人的には「ロゼッタ」がよかったです。
ワッフル食べるシーンが多くて、私も大好きなんですが、話が暗くてぜんぜん美味しそうじゃなかったですねw
Posted by bambi@管理人 at 2005年11月29日 22:53
こんにちは、昨日鑑賞しました。

余韻のあるラスト、とても素晴らしかったです。
センチメンタルな要素はないはずなのに、私は涙をこぼしてしまいました。
(年をとったせいか、涙腺が弱くて・・・)
Posted by 朱雀門 at 2006年02月19日 16:13
■朱雀門さま
「ロゼッタ」「息子のまなざし」はこれからご鑑賞でしょうか。
どの作品も,鑑賞後,静かな衝撃が続いてなかなか余韻が抜けませんでした。

私はスカッとさわやかな映画より,じくじくと痛む映画が好きなんだなぁと身に染みましたね。
Posted by bambi@管理人 at 2006年02月20日 09:08

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Tracked: 2006-02-19 15:28

ある子供&イゴールの約束&ロゼッタ
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