[DVD; TSUTAYA DISCAS]
中国返還直前の香港。下町の低所得者層アパートに住む少年・チャウ(サム・リー)は、中学を出て定職に就くこともなく、知的障害をもつ弟分のロン(ウェンバース・リー)を連れて借金の取り立てをしている。ある日、取り立て先で可憐な少女・ベン(ネイキー・イム)と出会う。一方、女子高生の飛び降り自殺に出くわしたロンは、少女の遺書を拾い持ち帰るが、その日からチャウの周囲に不幸なことばかり起こり始めた。
国返還前の先の見えない不安や不満を抱え、不透明な青春を過ごす少年たちの得体のしれないパワーがみなぎる。同時に、常に画面を覆うブルーが“死”を暗示させ、みんな自滅に向かっているようで、とてつもなく陰鬱な映画である。
スタイリッシュな映像と、魅力的なキャラクターに救われる部分もあるが、これがリアルな返還前の香港の姿だったのであれば、本当にやりきれない。常にタイミングがずれている彼らの邂逅が、どうにもならない宿命をより強調しているような気がした。
知的障害者のロンは、いつも金持ちの学校の制服を着た少年たちにいじめられている。そんなロンのためにいつも仕返しをしているチャウだが、同じ制服の少年が、実の娘(少年の妹)をレイプした父親の腕を切り落とすところを目撃して、何かを悟るシークエンスはとても衝撃的だった。貧乏人も金持ちも絶望し、大人たちは好き勝手に生きている。そんな社会に希望を持てるわけもなく、自滅の道をひた走ってゆくチャウの姿からは、息苦しいほどの焦燥感が伝わってくる。
映画が始まったばかりのころと、観終わった後では、サム・リーの印象が180度変わる。痩せすぎのチンピラが、スタイリッシュでカッコよく見えてくるのは時間の問題。この映画のためにストリートでスカウトされた素人だったそうだが、これほど魅力的な俳優だったとは知らなかったよ。
【★★★★☆】
メイド・イン・ホンコン サム・リー フルーツ・チャン ネイキー・イム
ポニーキャニオン 2004-04-21
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まずは御礼までに。