2005年08月25日

ドッグヴィル(2003/デンマーク/監督:ラース・フォン・トリアー)

ロッキー山脈の麓に孤立する小さな村・ドッグヴィル。
ある日、ギャングに追われる美女・グレース(ニコール・キッドマン)が逃げ込んできた。
トム(ポール・ベタニー)は、村でグレースを匿うことを主張。排他的な村人も、村で労働奉仕するグレースに次第に打ち解け、心を開いていく。
グレースもドッグヴィルが好きになっていくが、村人の要求は次第にエスカレートし、やがてグレースを奴隷のように扱うようになる。嫌気がさして村を逃げ出すが、すぐに連れ戻され、逃げないように重しをつけた首輪をはめられた。それからの扱いは家畜と変わりなく、夜な夜な男たちに蹂躙されるグレース。
そして、ギャングがグレースを迎えにやってきて、村に審判の日が訪れる。

地べたに線を引いただけの簡易なセット(というより見取り図)にまず驚く。
建物の屋根も壁もなく、それぞれの家の中(とされるスペース)で、住人が何をやっているのか一目瞭然なのだ。
建物の出入りや、ドアを開ける動作はパントマイムで表現するのだが、「ガラスの仮面」のマヤのひとり芝居にまったく同じシチュエーションがあったなぁ(こちらは演劇だが)。
ガラスの仮面」の場合は、マヤの演技力を際立たせるための手法だったが、この映画の意図はちょっとわかりにくい。だが観ているうちに、“境界”が存在せず、村全体を一目で俯瞰できることで、かえってドッグヴィルの閉鎖性が際立ってくるのがふしぎだ。あるべきものを排除することによって、見えないものが見えてしまう。逆にいえば、見せたいものがより強調されるという驚くべき演出である。
村の男が家の中でグレースをレイプしているのに、他の村人はまったく気づかないというシーンで、ようやく「やりたかった(見せたかった)のはこれだったのか」と気づくことになる。

反米映画といわれているようだが、舞台はどこでも良いんじゃないだろうか。
日本でも横溝正史の世界などまさにドッグヴィル的だ。
ただ、“人が人を赦すこと/裁くこと”というテーマは欧米の宗教観を感じる。
どれほど人間性を貶められても赦し続けるグレースの存在は、さながら、原罪を背負った人々を試すために降臨した女神のようですらある。
しかし、最後の審判で逡巡し、いったんはドッグヴィルの人々を赦しかけたり、裁きを下すのにも自分の手を使わないところは神らしくない(グレースが手をかけたのはトムだけ)。神は、ハルマゲドンを躊躇はしないだろうに。
結局は『“人を赦す”という傲慢を乗り越えた人間』の出した審判だったのではないかと思うし、そうなると“人を裁く”こともまた傲慢で、どこまでいっても人間とは傲慢で尊大な生き物なのだと痛感した。

ムズカシイことはさておき、ドッグヴィルの人々は“人間の家畜化”のステップが下手だね。完璧な家畜化マニュアルとして、「家畜人ヤプー」(沼正三)をおすすめしとこう。

じつは、この監督の映画は初めて。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」はあえて避けてきたところがあるんだけど、こういう問題性の高い映画は好きなので、やっぱり観てみることにしました。

【★★★★☆】

B0002B5A5Mドッグヴィル プレミアム・エディション
ニコール・キッドマン ラース・フォン・トリアー ポール・ベタニー

ジェネオン エンタテインメント 2004-07-23
売り上げランキング : 9,837
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

B0002AP1WKドッグヴィル コンプリートBOX
ニコール・キッドマン ラース・フォン・トリアー ポール・ベタニー

ジェネオン エンタテインメント 2004-07-23
売り上げランキング : 6,078
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

livedoorぽすれんで借りる≫ドッグヴィル

人気blogRanking ≪ひっそり参加中。よろしかったらclickしてって下さい。
posted by bambi at 01:07 | Comment(12) | TrackBack(18) | LOG #た-と
この記事へのコメント
TBどもでした。
トリアー作品の良し悪しは別として、
変わったものを作る作家として
注目しておく分くらいには悪く無いんじゃないかと思いますよ。
次回作も間もなくのようなので、
次はこの人何をやってくれるのかな〜と
楽しみにしてます。
Posted by GMN at 2005年08月25日 22:45
>GMNさま
そうですね、やっぱり食わず嫌いはよくないです…
まぁ、ダンサー〜を避けてきたのは個人的な思い込みのためで、作品のせいではないのですが。

ドッグヴィル、むしろかなり好きな作風です。
今まで避けてきたのはもったいなかった。
Posted by bambi@管理人 at 2005年08月26日 00:17
TBありがとうございます!
家畜人ヤプー気になる!!
いや〜奴隷扱いって怖いですよね…
Posted by ケイティ at 2005年08月26日 11:20
>ケイティさま
ヤプーは白人種が日本人を家畜以下のモノ扱いしている世界を描いた極M小説でして。
肉体改造・スカトロ・カニバリズム何でもアリなので、万人におすすめはできませんが、人間家畜化の理論体系や世界観が緻密で、読みごたえはあります。

いやホント、健全な方にはおすすめできないですが…
Posted by bambi@管理人 at 2005年08月26日 20:24
TBありがとうございました。
なんだかすごいブログですね。
今度ゆっくり拝見したく思います。
Posted by ひろ at 2005年09月14日 20:49
>ひろさま
どちらかというとB級・カルト作品が好きな私ですので、その手の映画レビューがやや多めですが、懲りずにまたいらしてくださいませ。
Posted by bambi@管理人 at 2005年09月16日 21:58
検索で貴記事を発見!
拝読させて頂きました。

>どこまでいっても人間とは傲慢で尊大な生き物なのだと痛感した。

監督の狙いはまさしくそこにあるのでしょうね。

ということで、
是非、私の記事、TBさせてくらさい。
(ブログの趣旨にそぐわないと判断された場合には、遠慮無く削除して下さいませ)
Posted by カゴメ at 2005年10月12日 09:20
>カゴメさま
TB元の記事には、以前に「奇跡の海」でもTBさせていただいております。
ドッグヴィルからもTBさせていただきますね。
Posted by bambi@管理人 at 2005年10月12日 22:55
はじめまして。TBさせていただきました。トリアー監督の映画はいつも賛否を巻き起こしていますが、それだけ彼の作品に対しては世間の関心も高いんでしょうね。
ちなみに、こちらのブログのヘッダーの画は「ヴァージンシネマズ@六本木」ですか?
Posted by travis at 2005年11月20日 20:25
>travisさま
監督ではないですが、来月公開の「ディア・ウェンディ」という映画の脚本書いてるみたいですね>トリアー氏。
ぜんぜんチェックしてなかったのですが、トリアー氏脚本と知って前売券買ってしまいました(・∀・)

写真は素材サイトからいただいたものを加工して使用してます。
どこの映画館だろーと思ってたんですが、言われてみるとヴァージン六本木っぽいですねΣ (゚Д゚;)
今度行ったときに外観チェックしてみよう。
Posted by bambi@管理人 at 2005年11月20日 20:50
>管理人さん
トリアー監督の『ドッグヴィル』の続編があるみたいですね(『Manderlay』)。やはりこの前のカンヌでも賛否両論だったらしいです。『ディア・ウェンディ』は初耳でした。ぜひ観てみたいです!
Posted by travis at 2005年11月20日 23:30
>travisさま
ドッグヴィルの続編!
知りませんでした…。
来年あたり日本でも公開されますかね?
いやー楽しみ(・∀・)
Posted by bambi@管理人 at 2005年11月21日 19:05

この記事へのトラックバック

「ドッグヴィル」
Excerpt: 「ドッグヴィル」 レンタルで観る。 うは〜っ・・・・・なんという映画だろう!(u_u: 奇抜な演出、奇抜なストーリー、奇抜な展開、そして奇抜なラスト・・・ 二コール・キッドマンはこの役..
Weblog: 誰もが十字架を背負っている
Tracked: 2005-08-25 22:22

ドッグヴィル
Excerpt: 原題:DOGVILLE 監督・脚本・撮影:ラース・フォン・トリアー 映画 デンマ
Weblog: TRUTH?ブログエリア
Tracked: 2005-08-25 22:28

ドッグヴィル
Excerpt:  まるで舞台劇のようなセット。背景もなく壁もない白線を引いただけの村。他の家で何をやっているのか全てわかるようになっている。奇抜な発想のため集中力なくしては観れない映画なのかもしれない。  プロローグ..
Weblog: ネタバレ映画館
Tracked: 2005-08-25 23:46

Dogville★★★★☆
Excerpt: 邦題:ドッグヴィル 『ロッキー山脈の麓に孤立する村ドッグヴィル。ある日この村の近く、ジョージタウンの方向から銃声が響き、村人の青年トムはギャングから助けを請う美しい女性グレースと出会う。彼は翌日、村..
Weblog: なおのオススメ文芸。
Tracked: 2005-08-26 00:01

ドッグヴィル
Excerpt:  DOGVILLE ジェネオン エンタテインメント ドッグヴィル プレミアム・エディション ? [監督・脚本]ラース・フォン・トリアー [..
Weblog: ケイティの映画的生活
Tracked: 2005-08-26 11:21

??????????????違?眼?c??????????????????篏?鐚???
Excerpt: http://app.blog.livedoor.jp/manatsui/tb.cgi/50088399 http://app.blog.livedoor.jp/digitalg1w/tb.cgi/..
Weblog: ??????????眼?<???激?????羇??????
Tracked: 2005-09-11 08:58

『ドッグヴィル』(☆☆☆☆)
Excerpt: いや~、何か強烈な映画だった・・『ドッグヴィル』。 途中までは、今年のワーストムービー『キングダム・オブ・ヘブン』を 超えるのではないかというくらい、嫌な展開だったんだけど、 終わってみたら☆4つ..
Weblog: ど風呂グ
Tracked: 2005-09-11 11:58

映画『ドッグヴィル』
Excerpt: ~美しき逃亡者があらわれ,一つの村が消えた.~審判の日がくる.ロッキー山脈の麓の貧しい村ドッグヴィル.ある日,この村に追っ手に追われる1人の女性が現れる.そして,村はこの女性を匿うことに決めたのだが…..
Weblog: Trace Am's Life to Success
Tracked: 2005-09-13 19:24

ドッグヴィル
Excerpt: 雨の日曜…「ドッグヴィル」見ました。 映画というよりは、その背景は舞台です。何せ「町」は白線で描かれ、ドアさえ「そこにあるつもり」なのですから。ラース・フォン・トリアー監督は風景その他一切を排除する..
Weblog: Mosaic
Tracked: 2005-09-14 20:44

☆トリアー監督という人☆
Excerpt: ラース・フォン・トリアーLars von Trier 生年 ■ 1956/04/30 出身地 ■ デンマーク/コペンハーゲン映画監督。“ドグマ95”主宰者。代表作:「..
Weblog: ★☆カゴメのシネマ洞☆★
Tracked: 2005-10-12 09:21

ドッグヴィル
Excerpt: 『ドッグヴィル』(‘03/デンマーク) 監督:ラース・フォン・トリアー ? この監督もそうとうぶっ飛んでます。 ラース・フォン・トリアー監督の「アメリカ3部作」の1作..
Weblog: 映画まみれ
Tracked: 2005-11-20 20:22

『ドッグヴィル』 ラース・フォン・トリアー監督
Excerpt: 鬼才トリアー監督が造った、「地味な日常から表面的な落ち着きを剥ぎ取り、その奥に潜むどろどろした人間の本性を裏の裏の裏まで引きずり出して見せつける」入魂の一作。日本では「いやぁ、すんげー激濃で重い..
Weblog: ~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録
Tracked: 2005-11-22 00:57

『ドッグヴィル』’03・デンマーク
Excerpt: あらすじロッキー山脈の麓に孤立する村ドッグヴィル。ある日この村の近く、ジョージタウンの方向から銃声が響いた。その直後、村人の青年トムは助けを請う美しい女性グレースと出会う。間もなく追っ手のギャングたち..
Weblog: 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ
Tracked: 2006-03-17 00:09

ドッグヴィル/ラース・フォン・トリアー
Excerpt: 白線で区切られただけの空間が村を表現しています。人間の傲慢さや残酷さを強調する異様な映像。それはまさに社会の縮図でした。 田舎の小さな村に突然現れた美しい女性グレース(ニコール・キッドマン)。平..
Weblog: 文学な?ブログ
Tracked: 2006-06-06 00:46

DVD「ドッグヴィル」
Excerpt: あまりいい評判を聞かなかったこの作品。 そういう作品って、やっぱり映画好きとしてみると観ない訳にはいかないのですよねぇ??。 チョークで道路に書いたイタズラ書きのようなドッグヴィルの町並み。セ..
Weblog: ☆ 163の映画の感想 ☆
Tracked: 2006-09-24 11:11

ドッグヴィル@我流映画評論
Excerpt: 今回紹介する映画は、ニコール・キッドマン主演のラース・フォン・トリアー監督作品『ドッグヴィル』です。 国内外の魅力的な映画を見るなら「GyaO」 まずは映画のストーリーから・・・ ア..
Weblog: ジフルブログは映画・音楽・札幌グルメを紹介|GFL BLOG
Tracked: 2007-09-23 04:12

ドッグヴィル
Excerpt: 賛否両論のこの映画。 私の本業である、役者の先輩が 「役者なら見ておいた方がいい」と言うので 見てみることに。 「ダンサー・イン・ザ・ダーク 」のラース・フォン・トリアーが監督なんですよね..
Weblog: 映画、言いたい放題!
Tracked: 2008-12-14 13:05

ドッグヴィル/Dogville(映画/DVD)
Excerpt: [ニコール・キッドマン] ブログ村キーワードドッグヴィル(原題:Dogville)キャッチコピー:美しき逃亡者があらわれ、一つの村が消えた。審判の日がくる。製作:2003年(デンマーク)配......
Weblog: 映画を感じて考える〜大作、カルトムービー問わず映画批評
Tracked: 2010-01-10 23:34
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。