2005年07月16日

誰も知らない(2004/日本/監督:是枝裕和)

daremosiranai.jpgとあるアパートに引っ越してきた親子。母親(YOU)は、父親は海外赴任中で、長男の明(柳楽優弥)と2人暮らしと言っているが、実は他にそれぞれ父親の異なる3人の子どもがおり、全員戸籍に入れておらず学校にも通わせていなかった。母親が仕事に行っている間、子どもたちは長男以外は部屋から出ることも禁じられ、その存在をひた隠して生活している。
そんなある日、母親は、20万円の現金と「しばらく頼むね」と書いたメモを置いたまま姿を消した。

私がこの映画のことを知ったのは、例によって、チハラトークで時々映画の感想を述べている千原ジュニアと、実際に出演している木村祐一の公開当時のコメント。カンヌで賞を取ったとかは関係なしに、YOUと木村祐一が出ていることから興味をそそられていた映画であり、題材が題材だけに「さぁ泣くぞ」といった気合いを入れて観たのだが、意に反してまったくお涙頂戴映画になっていないことに驚いた。
このように悲惨な事件をモチーフにとれば、いくらでもドラマチックな内容にできるのに、実に淡々としたトーンで子どもたちの生活が描かれており、事件の是非を問う直接的なメッセージ性はない。このような描き方に賛否両論あるようだが、一歩引いた目線の静かな描写が現実感を伴いつつ、どこかファンタジー性まで持たせた演出には驚嘆。

母親が蒸発した当初は、まだ母親の帰りを信じているためか子どもたちも明るく、それほど悲壮感はないが、当然のように生活資金も底を尽き、徐々に部屋は荒廃し子どもたちの様子も汚らしくなっていく。水道も電気も止められ、どうにもならない状況に明はイライラを隠せなくなってくる。母親がいなくなってから1年はゆうに過ぎていくが、大人と子どもでは時間の流れ方が違う。子どもたちにしてみれば永遠にも等しい長さだったろう。
それでも子どもたちは自分たちの小宇宙に固執し、大人に助けを求めようとしない。そんな子ども特有の楽観性と純粋性とある種の残酷さが痛々しくて胸に迫るが、それが不幸にしか見えないのは大人のフィルタを通すからだ。この映画は極力そんなフィルタを排除しようとしており、ハッピーともアンハッピーともつかないラストシーンで自分なりの答えが見つかる……かもしれない。

主演男優賞の柳楽優弥はもちろんいいが、私は長女役の北浦愛が印象的だった。4人きょうだいの中では最も地味で暗い性格だが、明るく屈託のない子どもより難しい役だと思う。北浦愛の実際のキャラと合っていたのかもしれないが、自然で微妙な表情から心情が最もよく伝わってきた。今後、子役として活躍するのは末っ子の清水萌々子ちゃんかもしれないけどね。

無責任な母親を演じるYOUは、ナチュラルな演技というよりYOUそのもの。子どもたちもそうなんだけど、演技力云々と言って良いのかどうかわからないほど自然体。ただYOUの存在感がこの映画の見どころの一つになっていることは確かで、間の取り方やアドリブはダウンタウンに鍛えられたのだろうと思えることはファンとしてちょっぴり嬉しくなる。(YOUじゃなくてダウンタウンの)

【★★★★☆】

巣鴨子供置き去り事件
東京都・豊島区子供置き去り事件報道に関する抗議文

誰も知らない
B0002PPXQY柳楽優弥 是枝裕和 北浦愛 木村飛影

バンダイビジュアル 2005-03-11
売り上げランキング : 1,084

おすすめ平均 star
star一人でも多くの、大人、に見てもらいたい映画。
star心に感じる映画
star「誰も知らない」ような社会に生きる私たちへのメッセージを含んだ秀作

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

livedoorぽすれんで借りる≫誰も知らない

人気blogRanking ≪ひっそり参加中。よろしかったらclickしてって下さい。
posted by bambi at 06:21 | Comment(11) | TrackBack(20) | LOG #た-と
この記事へのコメント
この監督のことを前2作で知ってて見ました。「ワンダフルライフ」は泣きました。いい話です。「ディスタンス」は考えさせられたけど、心が温かくなりました。それに比べ、この作品は感情移入が少ししにくかったのですが…見たあと数日してその話してたときに体にぞわぞわ感を覚えました。そんな感じの記憶があります。
Posted by びーだまシフォン at 2005年07月16日 11:09
こんにちは!TBどもです。
見た時は、救いようのないお話しに、怒りさえ覚えました。
bambiさまのおっしゃる、大人のフィルターですね。
もう2度と見たくないと思いましたが、もし、もう1度見ることがあれば、
違った見方が出来るかも知れませんね。
あたしにとっては、忘れ去りたいほど、イタイ1本でした。
Posted by 猫姫ぎゃる at 2005年07月16日 11:36
>びーだまシフォンさま
私はこの監督作品は初めて観ましたが、前2作も評価が高いんですね。ぜひ観てみたいと思います。
数日たってのぞわぞわ感……何だかわかります。どこかを刺激されるピリピリ感がずっと残留していそうな映画でした。

>猫姫ぎゃるさま
モチーフとなった実際の事件はさらに悲惨なものだったようですね。
猫姫ぎゃるさまのように怒ることにも充分意義がある映画だと思います。
Posted by bambi@管理人 at 2005年07月16日 13:22
TBありがとうございました。
こちらからもさせていただきました。

私たちから見ればあの子ども達の生活は「悲惨!ひどい!残酷!」に写るけれど、子ども達本人にしてみれば(他の子の生活ぶりをあまり知らないし)子ども達だけの生活でも、幸せを感じていたのかなぁ〜とも思います。

「相談してみたら?」というコンビニ店員のアドバイスに「そうしたら、兄弟がバラバラにされちゃって大変だったから」とあきらが答えてましたよね。社会の助けはあっさりと拒否!ですよ。

そういう所に、見ていて表現しがたい痛みを感じるんですよね。

これからもよろしくお願いします!
Posted by Gachami at 2005年07月17日 15:11
Gachamiさまこんばんは。
TB&コメントありがとうございます。

とっても仲の良いきょうだいですよね。
何不自由ないけどコミュニケーション皆無の家庭と、常識とはかけ離れていても皆で助け合う家庭どちらが幸せなのか。
いろいろ考えてしまいます。
比較すること自体無意味な気もしますが……。

私があのきょうだいの家の近所に住んでいたらどうしていたかなぁ。
知らないふりをするとは思いたくありませんが、気付かないってことはあるかもしれません……。
Posted by bambi@管理人 at 2005年07月17日 21:27
TBさせていただきました
&TBありがとうございます!
長女の子がYOUの塗ってくれた
マニキュアを眺めたり
もう一度塗ろうとして
床に落としてしまいYOUに怒られるシーンや
お金がそこをつき始めて
明にピアノのために貯めたお小遣いを
渡すシーンなど、なかなかよかったですね!
Posted by ケイティ at 2005年07月20日 16:22
ケイティさまこんばんは。

長女の爪がのびてマニキュアがほとんど剥げてしまっているところ、時間の経過と少女の心情が一瞬で観客に伝わりとても上手い演出だなぁと思いました。

たぶんあの子は最後までマニキュア落とさなかったんでしょうね…
Posted by bambi@管理人 at 2005年07月20日 23:21
TB thanks!!

>どこかファンタジー性まで持たせた演出には驚嘆。

ああ、そういう見方はしてなかったな。なるほど。悲壮感ばかりを考えていたけど、そうか、ファンタジー性が不思議な素敵さをかもし出してたんだなぁ。

P.S.
TB返しさせて頂きました。
Posted by JJJet at 2005年08月01日 18:44
JJJetさまこんばんは。

子どもだけの冒険だったら、家に帰れば家族が待っているし、充分リアリティありますよね。
これが子どもだけの生活となると、現実にはほぼ無理なわけで、もはやファンタジーの領域だなぁと思うわけです。
この映画のきょうだいだけの暮らしは、ファンタジーとリアリティの危ういバランスで不思議な空間を作り出していたように思います。
Posted by bambi@管理人 at 2005年08月01日 23:00
ワタシも、北浦愛ちゃんが印象的でした。あちこちのサイトを見ても、あまり彼女へのコメントが見られないのを残念に思ってました。いつだって長女ってのは損な役回り。
Posted by Saturnian at 2005年08月07日 19:51
>Saturnianさま
マニキュアのくだりとか、なかなかおいしい役だと思ったのですが、なぜか印象薄いみたいですねー。
性格的にはあまり可愛げがありませんが、私は彼女のその後の人生がいちばん気になります。
Posted by bambi@管理人 at 2005年08月08日 00:00
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/5121285

この記事へのトラックバック

誰も知らない 今年の127本目
Excerpt: 誰も知らない   映画の出来がどうこうって言うような作品じゃない。 なんなのこれ?? イタイ映画だってことはわかっていたし、だから、今まで手が伸びなかったのyo。 やっぱり、見なく..
Weblog: 猫姫じゃ
Tracked: 2005-07-16 11:32

「誰も知らない」
Excerpt: 「誰も知らない」 母親としてではなく女として生きることを選択した身勝手な人間に対して、自己の中に、怒りがあるのかないのか?・・・解らなくなってしまった、正直なところ。 母親の失踪当初は、4..
Weblog: 雑板屋
Tracked: 2005-07-16 17:35

誰も知らない
Excerpt: 久しぶりにこんなすばらしい映画に出会いました。 是枝裕和監督の作品は前にも「ワンダフルライフ」をこのブログで紹介したけど,この「誰も知らない」は,ものすごい衝撃を受けました。カンヌで上映終了後,5分..
Weblog: Kumio's psychological diary
Tracked: 2005-07-16 19:36

誰も知らない
Excerpt: 「誰も知らない」 ?    2004年/日本  監督:是枝裕和?  音楽:ゴンチチ?  出演:柳楽優弥 、北浦愛 、YOU 他 1988年に東京で実際に起きた「子ども置き..
Weblog: 月影の舞
Tracked: 2005-07-17 00:43

誰も知らない ★★★★★
Excerpt: 監督、脚本:是枝 裕和 出演:柳楽優弥、北浦愛、韓英恵、YOU 主役の子役、柳楽優弥君が、カンヌ映画祭で史上最年少最優秀主演男優賞を受賞して話題になっていたので、見たいと思っていた。 でも、そんなに..
Weblog: Gachami の映画と日記のページ
Tracked: 2005-07-17 14:59

誰も知らない
Excerpt:  NOBODY KNOWS [監督・製作・脚本・編集]是枝裕和 [音楽]ゴンチチ [出演]柳楽優弥      北浦愛      木村飛影      清水萌々子  ..
Weblog: ケイティの映画的生活
Tracked: 2005-07-20 14:25

救いのない映画、「誰も知らない」
Excerpt: 話題の映画「誰も知らない」を見て来た。第57回カンヌ国際映画祭で、主演の柳楽優弥君が最優秀男優賞を受賞した事で知れ渡った映画だが、それ迄は、作品自体が”誰も知らない”といった存在だったのではなかろうか..
Weblog: ば○こう○ちの納得いかないコーナー
Tracked: 2005-07-20 21:09

誰も知らない ★★★★★
Excerpt: 境目のない空気。その話題性を念頭に置いていたため、冒頭から映像の勢いに呑まれてしまった。フィルムが心のある部分に接続され、彼らの生き様が動き出した。社会から切り離されてしまった子供たちは、残酷とも思え..
Weblog: 切腹!
Tracked: 2005-07-20 22:50

誰も知らない
Excerpt: 主演柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU 監督・脚本是枝裕和 製作2003年、日本 生きる 母親に置き去りにされた四人の子供たちの姿を描いた作品。 三十代の母親と十二歳..
Weblog: a story
Tracked: 2005-07-24 13:07

誰も知らない
Excerpt: 作品:誰も知らない 監督:是枝裕和 主演:柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU 公開:2004年 日本 DVD 誰も知らない/Nobody Knows 生きているのは、お..
Weblog: のんびりぐ〜
Tracked: 2005-07-30 12:45

誰も知らない / 2回目
Excerpt: 誰も泣かない。 去年ロードショーで見たとき、気になったことがそれだった。 私は、言葉は、意味よりも「言い方、表情」が大切だと思っている。 声の大きさやイントネーション、話すスピードや語尾の選..
Weblog: 面白い映画とつまらない映画はどこが違うのだろう?
Tracked: 2005-07-31 02:14

誰も知らない。
Excerpt: 『誰も知らない』柳楽くん。これ面白い映画です、すごく胸に響く物語です。…というのは確かですが、俺は映画を見ている間中、思考はストーリの方には向いていなかった。思考と視線の先は    ずっと柳楽くん。っ..
Weblog: JUNK JEROH JET
Tracked: 2005-08-01 18:34

「誰も知らない」 洗濯
Excerpt: ◆ 近ごろ観た映画のなかでは、『誰も知らない』 (監督:是枝裕和) が断然よかった。長男役の柳楽優弥がカンヌで最優秀男優賞を受賞したことで話題になった映画である。 ◇ トラックからアパートに荷物が運び..
Weblog: SaturnianCafe - Memorandum
Tracked: 2005-08-07 19:43

誰も知らない
Excerpt: バンダイビジュアル 誰も知らない  つれづれなるままに17本目。誰も知らない。  偶には邦画。って事で前から気になっていた誰も知らないを観てみました。うーん・・・。感想が難しい。..
Weblog: cinema徒然草
Tracked: 2005-08-10 21:46

誰も知らない ★★★★★
Excerpt:   悲惨な境遇なのに、不思議な豊饒さがある。できることならこの空間と時間が永遠に続いて欲しい、そう思いながら観ていた。なぜ豊かさを感じるのか。本作のテーマは 、本当は誰もが知っていなければならないのに..
Weblog: マダム・クニコの映画解体新書
Tracked: 2005-08-11 12:33

Nobody Knows(2004,JP)
Excerpt: 誰も知らない  数カ月前からずっと観たいと思っていたのに、どのレンタルショップに行っても貸出中で。やっと昨日見つけて借りてきました!  カンヌ映画祭で柳楽くんが主演男優賞を受賞したってことしか知らな..
Weblog: The Final Frontier
Tracked: 2005-09-23 02:29

誰も知らない
Excerpt: 誰も知らない2004年 日本 悲惨だ。 何とかなってほしかった。 コンビニのお姉ちゃん達も心を鬼にして通告してほしかった。 でも一番腹立つのは無責任な母親。想像力のカケラ??
Weblog: cinema note+
Tracked: 2006-05-09 00:51

映画『誰も知らない』
Excerpt: 1988年、実在の東京・豊島区巣鴨の子供4人置き去り事件、・・自堕落で無責任な母親・・淡々と静かな感情が溢れ、切なく悲しい子供達の物語。 シングルマザーのけい子(YOU)と、明(柳楽..
Weblog: 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり??
Tracked: 2006-05-28 03:11

『誰も知らない』 誰も知ろうとしなかった
Excerpt: 柳楽優弥が史上最年少の14歳で、 2004年度カンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いた、 その演技もさることながら。 他の子供たちの表情も、とても自然で、 映画のためにカメラの前で演技をしている..
Weblog: *モナミ*
Tracked: 2007-05-05 19:00

誰も知らない(2004)
Excerpt: 12年前の作品なのですね。柳楽優弥が、史上最年少で2004年度カンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いた話題作。今も存在感のある見事な俳優さんですが、この年令ならではの輝きに感心しました。しかし、12歳にして..
Weblog: のほほん便り
Tracked: 2016-08-12 11:44
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。