2006年03月25日

ククーシュカ ラップランドの妖精(2002/ロシア/監督:アレクサンドル・ロゴシュキン)

シネアミューズ@渋谷】

kukushka.jpg1944年、第二次世界大戦末期のラップランド地方。フィンランド軍はかつて奪われた土地を奪還するためドイツ軍と同盟を組みロシア軍と戦っていた。フィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコ(ヴィッレ・ハーパサロ)は反戦的態度が問題とされ、ロシア軍の標的となりやすいドイツの軍服を着せられ岩に鎖で繋がれ置き去りにされてしまう。一方、反体制という濡れ衣で秘密警察に逮捕されたロシア軍大尉イワン(ヴィクトル・ブィチコフ)は、護送中に味方の誤爆に遭い、重傷を負ってしまう。近くを通りかかったサーミ人のアンニ(アンニ=クリスティーナ・ユーソ)は、イワンを自分の小屋へ連れ帰り手当てする。やがて、その小屋に、岩から自力で脱出したヴェイッコもやって来た。こうして、3人の奇妙な共同生活が始まるが、それぞれロシア語、フィンランド語、サーミ語しか話せない彼らの会話はまるで噛みあわない。おまけに、戦争未亡人のアンニは4年もごぶさたで、突然現われた2人の男にすっかり欲情してしまい…。

スクリーンから濃密な空気が漂ってくるラップランドの自然からは、神秘さと過酷さが感じられ、じわじわと引き込まれた。

言葉の壁を超えて絆が生まれる3人…というようなありきたりの展開になるのかと思いきや、3人とも最後まで好き勝手に振る舞い、ちぐはぐな会話を交わし、意思の疎通がとれているのかいないのか、不思議な関係が続く。
まったく言葉の通じない3人の会話は、いわゆる無理問答を聞いているようでとてもおかしい。すれ違いや自己解釈による誤解で大変なことになりそうな状況であるが、開放的な性格であっけらかんとしたアンニの存在が緩衝材となり、三角関係もコミカルでほほえましい。

言葉は通じなくても、ラップランドの大地と自然とともにたくましく生きている女性に出会って、身も心も疲弊した2人の元兵士が癒され、活力を得ていくのが、静かにゆっくりと描かれる。
夫を戦争に取られ4年もごぶさたのアンニが、久しぶりの男性に対する欲情を隠すことなく、本能のまま2人と寝て燃えちゃうところなんてとてもチャーミング。素朴な小屋から響き渡る交歓の声は、いやらしさよりも、原始的な生の営みというような力強さがある。

誤解からイワンに撃たれ、生死の境をさまようヴェイッコの魂を呼び戻すため、アンニの行う不思議な呪術の儀式はとても興味深い。
サーミ人とはラップランドの先住民のこと。詳しい文化的背景などはまったくわからないのだが、「おばあさんも(儀式を)やっていた」と言っていたし、アンニはそういう能力を持つ一族なのかもしれない。呪術師といえど、人の魂を呼び戻すなんて相当ポテンシャルが高い。だとすれば、“ククーシュカ”(ロシア語で鳥のカッコーのこと。“狙撃兵”という意味がある)のもう一つの意味とは、その能力と関係があるとも考えられる。超人的な能力ってのは、何かとひきかえに得られるものであり、アンニはやや頭が弱いという設定なのかも。

まぁ、私の穿った推測はさておき、とても素晴らしい映画であった。北欧に興味のある人は是非。

評価:★★★★★

人気blogRanking ≪ひっそり参加中。よろしかったらclickしてって下さい。
posted by bambi at 23:48 | Comment(4) | TrackBack(12) | LOG #か-こ
この記事へのコメント
神秘さと過酷さ、にじみ出てましたね。
ラップランドやサーミ人のことをあまり知らなかったんですが、
そういうことも知れて良かったです。
映画は、そういった民族や風俗の教科書にもなって、
見たことによって北欧に対する興味が強くなりました。
Posted by 現象 at 2006年03月28日 23:20
■現象さま
ちょうど最近,トーベ・ヤンソンのムーミン谷シリーズを読み返していたので,プチ北欧祭りです。
サーミ人は私も初めて知りました。独特の衣装と,シンプルでたくましい生活が印象的ですね。
家がナナメに建っている? のもなんだか不思議。
Posted by bambi@管理人 at 2006年03月29日 08:55
結構好きです。
たまにはこんなま〜たりした時間で映画観るのも良いなあと思いました。
スローライフならぬスロームービーかな。もっとも評価は別れそうですね。
Posted by ノラネコ at 2006年03月30日 00:23
■ノラネコさま
私はかなり好きです、この映画。
気が長〜いんで、スローテンポも平気なんですね。

しかしフィンランド軍隊はけっこう残酷なことしますよね〜
Posted by bambi@管理人 at 2006年03月30日 00:39

この記事へのトラックバック

「ククーシュカ ラップランドの妖精」
Excerpt:  2002年/ロシア  監督/アレクサンドル・ロゴシュキン  出演/クリスティーナ・ユーソ      ヴィッレ・ハーパサロ      ヴィクトル・ブイチコフ  モスクワ国際映画祭で5部門..
Weblog: It's a wonderful cinema
Tracked: 2006-03-26 01:59

ククーシュカ ラップランドの妖精(2002露)
Excerpt: ---------------------------------フィンランド版DVD↑今日も勘違いしていました。試写状や宣伝に使われている写真は..
Weblog: WAKOの日常
Tracked: 2006-03-26 21:31

ククーシュカ ラップランドの妖精
Excerpt: 「北緯66度33分」神秘の国の楽園伝説 ファンタジーものではなかった・・・ 妖精、なんてきくとおよそ寓話的なイメージを抱く私。 まあ、ある意味寓話的な不思議な雰囲気のある作品だった。 どちらかとい..
Weblog: シャーロットの涙
Tracked: 2006-03-28 00:27

ククーシュカ ラップランドの妖精
Excerpt: フィンランド最北のラップランドで、ロシアとドイツの同盟国であったフィンランドが戦っていた頃、命を落としかけたロシア兵のイヴァンとドイツ兵の軍服を着せられたフィンランド兵のヴェイッコの二人は、現地に住む..
Weblog: 日っ歩??美味しいもの、映画、子育て...の日々??
Tracked: 2006-03-28 07:18

ククーシュカ ラップランドの妖精/ アンニ=クリスティーナ・ユーソ、ヴィル・ハーパサロ
Excerpt: 「かもめ食堂」といいこの映画といい、もしかして今年はフィンランドの当たり年?この作品もまさにフィンランドタイムと言えばいいのでしょうか、とてもとてもゆったりとそして優しい時の流れと空気感に包まれたよう..
Weblog: カノンな日々
Tracked: 2006-03-28 22:17

ククーシュカ ラップランドの妖精@シネ・アミューズ
Excerpt: ラップランドの風景を、青みがかったモノトーンのような色彩で捉えて、自然の幻想と雄大さ、加えて厳しさが伝わる。その上、サーミ人のスタイルも幻想的だった。シャーマンの儀式に時間を費やす。自然に従事し、自然..
Weblog: ソウウツおかげでFLASHBACK現象
Tracked: 2006-03-28 23:08

ククーシュカ ラップランドの妖精・・・・・評価額1400円
Excerpt: ラップランドという地名を初めて知ったのは、たぶん「ニルスの不思議な旅」を読んだ時だ。 スカンジナビアとロシアの北極圏に跨る、広大な森と湖の世界。 夏になると太陽の沈まぬ白??
Weblog: ノラネコの呑んで観るシネマ
Tracked: 2006-03-30 00:21

ククーシュカ:わかりあうのに言葉はいらない シネ・アミューズ
Excerpt: 第二次大戦中フィンランドは、ロシアに奪われた領土を取り返すため、ドイツとともにロシアと戦っていた。そのころフィンランドの北のはてラップランドで起こったお話。 フィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコ(ビ..
Weblog: 気ままに映画日記☆
Tracked: 2006-04-10 00:25

ククーシュカ ラップランドの妖精
Excerpt: 第二次世界大戦末期、スカンジナビア最北の地、ラップランドではロシア軍、ドイツ軍、そしてドイツと同盟を結んでいたフィンランド軍が戦っていた。フィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコ
Weblog: 多感な乙女のDELICIOUS LIFE
Tracked: 2006-04-10 22:31

ククーシュカ ラップランドの妖精
Excerpt: ククーシュカ ラップランドの妖精公開中ストーリー ☆☆映画の作り方☆☆総合評価 
Weblog: シネマ de ぽん!
Tracked: 2006-09-07 12:21

真・映画日記(1)『ククーシュカ ラップランドの妖精』
Excerpt: 5月7日(月)◆434日目◆ GWに大量にDVDを借りてしまった。 今日から1日2本ペースである。 まずはロシア映画『ククーシュカ ラップランドの妖精』を見る。 正確にはロシア製フィン..
Weblog:           
Tracked: 2007-05-27 10:18

映画『ククーシュカ ラップランドの妖精』
Excerpt: 原題:Kukushka 4年間男日照りという彼女、男の肌に触れただけで濡れてしまうなんて、なんて面白いんでしょう・・悲惨な戦時下とはいえラップランドに妖精が羽ばたく・・・ フィンラ..
Weblog: 茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〜
Tracked: 2007-07-21 01:01
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。