2006年02月01日

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々(2005/ドイツ/監督:マルク・ローテムント)

シャンテ シネ@日比谷】

shirobara.jpg1943年のドイツ・ミュンヘン。“打倒・ヒトラー”を訴え、ビラ配りなどのレジスタンス活動を繰り返す“白バラ”と呼ばれる地下組織が存在した。2月18日、メンバーの一人、ミュンヘン大学の女学生ゾフィー・ショル(ユリア・イェンチ)は、兄ハンス(ファビアン・ヒンリヒス)とともに危険な大学構内でのビラまきを敢行し、運悪くゲシュタポに逮捕されてしまう。すぐさま、ベテラン尋問官のモーア(アレクサンダー・ヘルト)により厳しい取り調べが開始される。ゾフィーは恐怖を押し殺しつつ、毅然とした態度で理路整然と自らの無実を訴え続けるのだったが…。

ゾフィー・ショルについて、「ヒトラー〜最期の12日間〜」で、ヒトラーの秘書となった女性トラウドゥル・ユンゲが生前のインタビューで言及している。
「アウシュビッツやユダヤ人虐殺は自分の知らないところで起こったことで、関係がないと思っていた。しかし、後に自分と同年のゾフィー・ショルという女性の存在を知り、自分の罪を知った。知らなかっただけでは済まされない。目を見開けば気づくはず」

ユンゲがヒトラーに忠誠を尽くす一方、ゾフィーはゲシュタポの取り調べで、ナチスの行っているユダヤ人および精神障害児の虐殺を批判し、良心に反すると主張している。
人は、自分の帰属している社会が間違っているとは、理由もなく他者を虐げているとは考えたくない。知りたくないことに目をつむり、周囲から与えられる耳触りの良い情報だけで判断して生きていくのは楽なことだ。
後からナチスを批判することはいくらでもできるけれど、渦中にあって自分の良心と信念に従い行動することができるのだろうか。
大多数の人は、ヒトラーの秘書ユンゲや、ゲシュタポの取調官モーアのような思想で事態を見ることになるのではと思う。
だからこそ、ゾフィーの精神性に圧倒され、言葉を失う。

物語はほぼ、モーアによるゾフィーの取り調べと、狂気の法廷シーンのみ。モーアの取り調べが静かな緊張に満たされたものであれば、法廷シーンではダイナミックな高揚を感じる。実にスリリングな演出。
ゾフィーやハンスの命を賭けて信念を貫く姿勢は、モーアに強い感銘を与え、法廷では裁判官や傍聴人に恐れを抱かせている。
製作者の思惑とははずれてしまうだろうが、私にはとても“21歳の等身大の女子学生”には見えなかった。まるで預言者か神が憑依しているかのような気高さ、神々しさ。
ゾフィーのように生きることは難しい。何事も、良心に照らし合わせて考え、行動することは簡単ではないけれど、“目を見開いていれば気づく”ことすら気づかないでいることは、罪でしかないことを思い知った。

時を越え、現代の我々に強く訴えかけ、真の勇気について考えさせられる白バラの活動は、決してナチスの前にはかなく散ったのではなく、力強い花弁の一片を残してくれたのである。

評価:★★★★☆

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posted by bambi at 23:59 | Comment(8) | TrackBack(30) | LOG #さ-そ
この記事へのコメント
こんばんは

> まるで預言者か神が憑依しているかのような気高さ、神々しさ。

これは良い表現ですね、全く同感です。
始終糸を張詰めたような流れでしたね。
Posted by yanks at 2006年02月04日 21:46
■yanksさま
モーアの取調べと法廷シーンでそれぞれ異なる緊張感があって,テーマも興味深いですが,映画としても非常に見ごたえがありました。
Posted by bambi@管理人 at 2006年02月07日 09:51
TBありがとうございました。
社会がナチ一色の時代に、ゾフィーのように目を見開いて、しかも信念にもとづいて行動できることって、すごいですよね。
ゾフィーはたしかに神がかり的でしたが、一瞬それが崩れて涙や叫びをみせた瞬間が、とても印象的でした。
Posted by chatelaine at 2006年02月11日 11:02
■chatelaineさま
本来は、一人の女子学生の記録として見なくてはいけないのだと思いますが、ゾフィーの高い精神性に圧倒されてしまいました。

それでも、処刑が決まったときのゾフィーの咆哮は胸に突き刺さるものがありましたね。
Posted by ambi@管理人 at 2006年02月11日 13:38
ドモドモー♪
シャンテ・シネ、混んでましたでしょう!?
あちこちで鼻をすする音が聞こえて来て、ワタシも涙しましたです。

>“目を見開いていれば気づく”ことすら気づかないでいることは、罪でしかない
同感ですー
気づかないで居ることは一見「仕方が無い」と思いがちだけれど、でも、無知ゆえの罪なのですよね。
ワタシも肝に銘じたいと思います。
Posted by Puff at 2006年02月11日 19:55
■Puffさま
何度かTB打ちましたが、どうもうまくいかないみたいで…。スミマセン。

大雨だったにもかかわらず、シャンテシネは満員でした。しかもラストに軽く地震が来たりして( ゚Д゚)

長いこと生きててもw、知らないことって多いんだなーと省みる今日このごろです。
ささいなことでも、目を見開いて生きていかなければいけないですね。
Posted by bambi@管理人 at 2006年02月11日 21:30
こんばんは。
ゾフィーとモーアの激しい論戦の中、ゾフィーの信念に感動しながらも、物語の中で精神的敗北者となるモーアにも感情移入している自分がいました。
もしこの様な時代が再び来たとしたら、自分はひょっとしたらモーアの様になってしまうかも、と気弱な小市民としては考えさせられました。
Posted by ノラネコ at 2006年02月16日 01:23
■ノラネコさま
モーアも、自分の力の及ぶ範囲でゾフィーを助けようとしていましたね。
ナチスの思想に染まってはいるけれど、彼は自己を省みることのできる人間のようでした。
実際は、それすらもけっこう難しいことではないかと思います。

モーアの役どころは重要で、この映画のキーとなっていると思いました。
Posted by bambi@管理人 at 2006年02月17日 20:21
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